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〜テーラーメイドの医療を提供するために〜

外山ブログWeblog

2014年2月18日 バイリンガル脳の力

数か月前のタイム誌科学欄に”バイリンガル脳の力“と題する記事が掲載されていたのでご紹介したい。
この記事は、以前から少しずつ言われてきたことではあるが、バイリンガル脳の優越性が科学的にも証明されてきていることを根拠に米国ユタ州の試みを紹介している。

 ユタ州教育委員会は、2009年に25の小学校1400人の生徒を選んで、英語のほかに、フランス語、スペイン語、中国語(マンダリン)の授業を開始した。昨年末には100校に増やし、2万人の生徒が多言語授業を受けている。此の数はユタ州の小学校の20%にあたる。内容は、一日の半分は英語で、半分は外国語で授業が行われる。近いうちにポルトガル語が追加されるという。
 ユタ州では、この試みを決定した理由を次のように伝えている。
”多言語が出来ることはこれからのグローバリズムに適合し、中国などの経済的な新興勢力に対抗する上で必要と考えることよりも、子供たちが成長していく過程で、効率よく知識などを習得できることが最大のメリットである。“
 ユタ州のプログラムをサポートする医学的 科学的研究は多く存在する。
 スウエーデンのランド大学の実験はよく知られているが、以下のようなものである。
 学生の中から希望者を集めて、2つのグループに分けた。グループAにはアラビア語とダリ語(学生たちは全く初めての外国語であることを確認)を連日勉強させた。グループBの学生には通常の医学、認知学等の勉強を連日させた。 両グループ全員にMRIを含む脳スキャンをこの実験の前と13ケ月後の終了時に行って比較した。アラビア語等の外国語を詰め込まれたグループAの学生の海馬(脳の一部で記憶や新しいことを理解する能力を司る部分)は前後で明らかに大きくなっていたガ、グループBの学生では変化がなかったという。
 米国ケンタッキー大学が60−68歳を対象に行った研究でも英語のみを使うグループと多言語を使うグループとの比較で新しい知識の習得や正確さの相違のみならず脳MRIでもはっきりと違いがでたという。
 このプログラムをはじめてユタ州では5年が経過しているが、子供たちに有意な差が出ており、保護者が何とかして自分の子供をプログラムに参加させてもらいたいと運動している。現在、他の多くの州の担当者がユタを訪れ、ノウハウを学んでいる。
このプログラムの責任者で言語専門家は、“単一言語しかできない人は21世紀においては非識字者である”と自州の試みに大きな自信を示している。

 英語教育の稚拙さが叫ばれ続けている日本で、外国語を身に着ける実利面からのみならず、脳の本質的な活性化にも役立つ外国語教育を本格化させる必要性が感じられる記事でしょう。

2013年10月23日 ゲノム検査(遺伝子検査)

 ヒトの全ゲノムが解読されて10年が経過しゲノム検査は日常的な医療になる日も近くなってきました。

 ゲノム(genome)とはgene(遺伝子)とchromosome(染色体)をくっつけて作られた合成語です。即ち遺伝子や染色体を包括して表すことばです。遺伝子はDNAという核酸の機能単位から成っていて、人体を構成する種々のタンパク質のつくり方やつくるタイミングなどを決めています。家を建てる場合の設計図の役割です。ゲノム検査の1つにこの遺伝子を構成するDNAを調べるものがあり“DNA検査”又は“スニップ検査”などと呼ばれています。遺伝子(DNA)は親から受け継がれたものですからその人特有のもので、1回検査すれば十分です。又、そのDNAの個性を変えることは現在の医学では不可能です。従ってこのDNA検査は究極の個人情報となります。遺伝病と言われる疾患の診断に使われるものですが、遺伝病と言われるものは現在の医療技術ではまだ治すことは出来ません。

 さて、前述したように遺伝子(DNA)は人体の設計図ですから、最終的にタンパク質を作ることになります。タンパク質を作るのに必要な部分のDNAはコピーとしてRNAという別の核酸に写しとられます。これをメッセンジャーRNA(mRNA)と呼び、これに別の物質が結合しアミノ酸が出来ます。アミノ酸がつながって最終的にタンパク質となります。従ってタンパク質は元のDNA(遺伝子)によって決められることになります。

 ゲノム検査のもう一つには“発現解析”と言われるものがあります。がんの遺伝子検査を例にあげますとレントゲンをはじめ画像診断や内視鏡などでは確認出来ないレベルのがんの状態を血中のDNA, mRNA,がん抑制遺伝子(前回に述べたBRAC1,2など)などを測定することによって発見出来るのです。これをmRNA発現解析と呼びがんの予防や超早期診断に役立てているのです。がんのリスク予測や前がん状態のリスクを特定することにも有益な検査と言えます。この検査結果に対して、がんの発症リスクを減らすような日常生活等の改善が行われれば、がんになる確率を減少出来ることになります。従ってmRNA発現解析を年に1〜2回受けることの意味は大きいと言えます。

 発現解析の検査は僅かの血液(2.5cc)を採取するだけで済みますから人体への負担も軽く簡便な検査です。人間ドックを受ける際に希望すれば、採血の際に同時に検査が済んでしまいます。年1回の人間ドックの際にこの検査を加えて、がんになるリスクが減少していることを知るのも生活の質向上に役立つかもしれません。“発現解析”の検査は何処の病院でも出来るわけではありませんので、関心のある方は当プロジェクトをはじめ行っている医療機関にお問合わせ下さい。

2013年9月9日 超早期診断とは

 著名なハリウッド女優アンジェリーナ ジョリーさんが予防的乳腺切除を受けたことをマスコミで披露したのは多くの方がご存知だと思います。
 ジョリーさんの母親が56歳の時、乳がんで亡くなっていることから乳がんに関心があり遺伝子検査を受けました。その結果、家族性乳がんに関連する遺伝子のBRCA1,BRCA2(どちらもがん抑制遺伝子)の変異が見つかりました。がん抑制遺伝子とは、がんの発生を抑制する機能を持つたんぱく質を作る(コードする)遺伝子で現在までに代表的なものだけでも30種類以上見つかっています。私たちのからだは、これらのがん抑制遺伝子が正常に機能することによってがんになりにくいようになっているとも言えます。
 ジョリーさんはこのがん抑制遺伝子のBRCA1,BRCA2の変異がわかったわけですからがんになる確率が高いことになります。どのくらいの確率かと言いますと、生涯リスクが87%です。即ち、乳がんにならない可能性が13%しかないわけですから相当のショックで有ったと思います。そこで、がんになる前に乳房組織を取り除く決心をしたわけです。
 予防的乳腺切除という概念には賛否両論以上に種々多くの意見が出ることでしょうが、国民一人ひとりが考えねばならない課題であることに間違いはありません。
 乳房のように私たちの生命維持に不可欠でない臓器がゆえに選択の余地が発生します。
 しかし、多くの臓器は生存に必須のものです。予防的切除という概念は当てはまりません。この問題を少しでもより良く解決する方法は、早期診断、早期治療です。確実な早期診断、治療をおこなう為には、超早期診断が必要になります。超早期診断とは、がんが発生する前の状態を知ること、即ち、ゲノム診断(遺伝子診断)です。ゲノム診断の先進国アメリカを追って、わが国でもこれからますます盛んになっていくと思います。次回には、ゲノム診断について判り易く書いてみます。


2013年5月31日 胸部外科医の数が減っている(アメリカ編)

オハイオ州立大学モハットブルース教授のグループの調査によると、米国の胸部外科医(心臓外科、呼吸器外科、食道外科医の総数)の数が減っていると言う。米国では、すべての専門分野において医学部卒業後の臨床研修年数が決められている。胸部外科医の研修は約7年〜10年が課せられている。この間に一般外科、腹部消化器外科を中心に外科系のほぼすべての専門科を短期間とは言え研修しなければならない。
 最後の2年〜3年は胸部外科のみに専念してトレーニングを受ける。
 ここ10数年では、胸部外科研修の希望者の数が減っているが、それに加えて特にこの数年には、専門医試験の合格率が落ちている。
 モハットブルース教授の調査は、最近の12年間を前半(2000〜2005年)と後半(2006〜2011年)に分けて比較している。研修終了後は専門医試験は筆記試験と口頭試験の2つがあり、筆記試験の不合格者は前半が10.6%、後半が17.4%、口頭試験のそれは前半が14.4%、後半が28.1%と、どちらも不合格率が増加している。この不合格率の増加の原因を探索すると、次の事が明白となった。前半は労働基本法(1週間に80時間を超えて働いてはならない)の施行されている前で、後半は80時間/週という制限が行われている時期である。週80時間とすると日祭日も含めて1日平均11時間労働となり研修医としてはかなり仕事時間が少ない。私が研修を受けていた1970年代は、一般外科では、3日に1度の病院当直、胸部外科の1年目は隔日の当直、最終年度は毎日オンコールという具合であった。土、日もお構いなしの労働であったので、1週間80時間規制はいかに少ない労働時間であるかが判る。研修医にとって労働時間が短いという事は、貴重な臨床経験の減少に繋がる。特に外科系では、労働時間の多くが手術に費やされる事を見れば外科医としての経験不足となる事は否定できない。特に、口頭試問は、より臨床経験に即した内容である為、病院にいる時間が少ない事は、臨床経験が少なくなる訳で、実地に即した口頭試問で正解を得る事は極めて困難となる。従って80時間/週規制が敷かれてからの口頭試問の不合格使者が28%即ち4人に1人以上が落第となっている事は十分うなずける事である。
 年度別の胸部外科医専門医の誕生数を見てみると、私が研修をしていた頃は180〜220人/年程度であったと記憶している。しかし、2002年には126名、2011年には92名しか誕生していない。胸部外科研修医希望者が減少している上に合格率が下がっているダブルパンチにより、米国の胸部外科医の数が減少しているのである。
 高度な技術を持った胸部外科医のニーズが高まる中、なり手が減っている事は重大で、米国胸部外科学会では対策を迫られている。

2013年2月18日 ホームページが完成しました

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2013年2月18日にホームページが完成しました。
これから随時、皆様のためになる新しい医療情報や国内や海外のトピックスを提供してまいります。



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